【人】 孤児 ヘイダル「…………ぇ!?ちょ、芯は残せよ!?!?」 気付けばちんちくりんは、中心のほっそいところまで食べ進んだ林檎を、しょりしょりと鉛筆を食べるみたいに最後まで平らげてしまっていた。 ……種あったし。 そもそも、固くわ甘くなくわで、そこは全く旨くもなかったろうに。 「もしかして、林檎の食べ方も知らないのか、お前」 呆れた風に呟いたけど、こいつの瞳が、あんまりにきらきらしていたものだから、喉の奥がおかしな音を立てた。 それは華やかな夜市の照明よりも、夏の空一面の星空よりも、ずっと綺麗な瞳で、綻んだ笑顔は大輪の花のようで。 え、このちんちくりんが綺麗とか。おかしいだろ。 おかしいだろ、俺。 だから俺は、自分がどんな顔になっているかもわからないまま、 「うん。がんばる。……絶対、負けねー」 なんだか酷く間抜けな返事しかできなかったんだ。* (20) Valkyrie 2019/06/15(Sat) 15:35:12 |