【人】 3年 櫻井 快人[俺は小鳥遊を、家の玄関まで送り届けるつもりだったが、それは叶っただろうか。] また、なんかあったら聞くから。 いつでも、声かけて。 [別れ際、そんなことを言う。 それから、一瞬だけ、迷った。 迷った末……言わなかった。 なぁ、試しに俺と、付き合ってみない。 たった一言、けれど臆病者には決して口にできない一言だった。 だって多分、俺は小鳥遊を“可愛い女の子”にしてあげられない。 そもそも、好きかと問われたら、即答できる自信がなかった。 好きなのは確かだ。 だが多分それは、小鳥遊の望む形ではない。 俺は、好きな相手と付き合うというより、付き合う相手を好きになるタイプだから。 今現在、俺が小鳥遊に向ける感情は、ほっとけない、とか、どうにかしてやりたい、とか、なんだかこう、じっとしていられないような何かの感情だった。 幸か不幸か、こんな時でさえ、俺の前髪は俺の感情にカーテンをかけていた。] (20) 2020/11/13(Fri) 2:18:46 |