【人】 1年生 朝霞 純【現在・レストランから物販コーナーへ】 >>15 [呼ばれる声に振り向いて、続く言葉に胸を突かれる。 記憶のことは確かに、回復して良かったと思う。 きっと忘れたままの方が今の状況は喜べたんだろうけど、忘れたままがよかった、とは思わない。 それでも、帰還おめでとう、と良かったな、の言葉には頷くことが出来なかった。きっと私は顔色を失っていたと思う。 続く一言、それは記憶を取り戻した私に、って意味なのかどうか。その言葉も上手く受け取れなかった。辛くて。 津崎さんって本当に真っ直ぐな人だ。いつか思ったみたいに、物語の主人公みたい。 対して私は、いつも誰かに背中を押されて、ようやく一歩踏み出すばかりで。 津崎さんの言葉に返答出来なかった私は、暫く押し黙って、少しだけ津崎さんのことを見ていた。やがて、ぽつり。] 記憶に関してはありがとうございます。色々と迷惑もかけたのに、私を見捨てないでいてくれて。 [記憶のことだけ、肯定することにした。] (20) 2022/09/10(Sat) 6:23:56 |