【人】 高山 智恵 こうして混雑時を乗り切って、ひと心地ついた頃だったかな。 ひとりの客がこのカフェを訪れてきた。 学生、という風には見えなかったけれど、別におかしいことではない。大学のすぐ近くに立地していることからその大学の生徒が客の多数になるというだけで、近隣の住民や通りがかりの人が店を訪れることだって普通にある。 さて、その客は常設のメニューにあるアイスカフェオレを注文してきたのだけれど――。 「何かあったんですか、お客さん?」 いかにも何か愚痴りたい……否、はっきり「愚痴吐き出し」たいと零したその声を私は聞き逃していない。 さっきまでの繁忙時間帯の修羅場の時にここに辿り着かなくて良かったね、と内心思いながら。 私はカウンター越しに、ちょっとどころか大分心労を抱えているように見えたその客の愚痴を聞くことにしたのさ。** (21) 2022/10/13(Thu) 9:49:18 |