【人】 葛切 幸春……、あんたの運転は心地好いな。 とはいえ毎度世話になるのは、申し訳無くなるが。 [再び緩やかに発進する車の背凭れへ、幾らか気を弛めた様に身を預ける。 途中聴く“何ら変わりなく”は、相手の場合それはそれで心配ではあったが、此処で掘り下げる事はせず相槌に努めた。] いや、俺は特に……。 というよりも待て、何も用意せずともいいと言っただろう。 [気遣い深い相手の事、忙しい中での負担を避けるべく予測出来る持て成しは事前に止めた筈だった。唯でさえ送迎の手間を掛けている。此方とて手土産は用意したが、己の甲斐性の無さに眉間に皺が寄った。 ――その間にも、車は滑るように道路を往く。] (21) 2024/04/27(Sat) 22:30:35 |