【人】 Cucciolo アジダル[ 男は──少しばかり傷の青年は、 ふと背中越しに見えた影が道に伸びるのを見て振り返る。 そこに立っていた人物を、観測者を確かめれば 慌てて手を伸ばしたことだろう。 ] あー、待ってお兄さん、 今ちょっと取り込んでるからこの道行かないで! [ 焦燥を滲ませながら自分の後ろだか死角だかに導くように かくれてかくれて、と腕を引く。 彼が何かしゃべろうとすればその唇に立てた指を近づけ しぃっと沈黙を要求しよう。 風景に似つかわしくない素材の良いスーツの襟を開き、 肩を埃っぽい壁に押し付けるまでしている事態だというのに 妙に呑気な高揚を讃えた笑みは、 大人びた子供のようにも見えたことだろう。 実際ワクワクしている。 ] (22) Muimerp 2020/10/04(Sun) 8:19:00 |