【人】 陰陽師 讃岐 氐宿「鬼一さまは白虎の加護を享けておられる。剛き星ですが、血を多く流す。御覚悟の強さの余り、不和を余分に引き起こしてしまう”タチ”であるご様子。故に」 三課に記された天空の名を、とん、と叩く。 「やつがれのような、天空の加護を享ける者が、遠く見られるのでしょう。初伝にも同じく天空が出ておりますれば、……そうですね、噛み砕きますと『掴み所、捉え所がない』と不安になられておりますか」 語り乍ら書いていたのは半刻程はどうしても作成に必要だったからだ。 しかし、読み解きに支障はない。どうせ、これらも補助に近しい。 「──やつがれは既に滅びゆく家の末裔でしかありませぬ。鬼一さまのように期待されるようなお役目も持たず、守るべき家もなく、故になにも囚われるモノがないと悟ったのでありますよ」 全てを書き終え、枝を手放す。天地を示し、定めを示す盤を見下ろす。 そこにあるのは紛れもなく、────。 「で、ありますから、物珍しくも見えるのやもしれませぬ。都は俗人が多う御座いますし、このように何も持たぬ者が宮中に近しくあるというのも、そうはないのでありましょう」 (23) mile_hitugi 2021/04/24(Sat) 7:39:35 |