【人】 4432 貴戸 高志>>22 普川 「……っ」 はく、と唇が戦慄く。 どこかで線引きをしていた。ここを超えたら恥ずかしいものだと。ここを超えるまでは子供でも出来る戯れだと。 「……二人だけでするはずの秘め事。 ……………………言われてみれば、そう、ですね。 俺は……肌を重ねることを特別視していた。 先輩の言う通り、口づけの時点で当事者の間だけで秘めるべき触れ合いなのは確かなのに」 セックスが大人だけに許された特別な行為だと、どうして思い込んでいたのだろう。 現に自分は、自分の想い人は、少年たちは、こうして容易く一線を超えてしまっているのに。 いつの間にかからからになった口の中でなんとか舌を動かして、「教えていただきありがとうございます」と小さく紡ぐ。藤色の髪が、言葉に合わせてぱさりと前に倒れて揺れた。 (23) 2021/09/23(Thu) 13:09:06 |