【人】 高らかに、あなたの元へ届け ストレガ>>23 女は、眠り姫へと手を伸ばす。その髪を軽く撫でてやる。 「……。ああ、そうだ。時計塔、吹っ飛ばしちゃったからさ。 あたいここに住む事にしたから。いいだろ? これなら毎日、借りに来ることが出来るじゃんか」 勝手な事を口にして、髪を撫でていた手を離し、 抱かれた猫の片方、くたくたになった黒猫の頬を突く。 くにゃりと曲がった顔は、首を傾げるようだった。 「でもさあ、あんたは……あんたはさ、 いつまでもここにいる訳にもいかないだろ? それにハエなんかたかってるの見たら、 あたいがまた住処を吹っ飛ばしちまいそうだし。 ……だからさあ、提案なんだけど」 そう言って、抱かれた猫の内、幾らかしゃんとした 白い猫を腕の中から抜け出させてやる。 「あたいがこの子、借りていくよ。 で、あんたにはその子、貸したままにしとく。 それでさあ……いつかまた会う時が来たら、 お互いの猫を返すってのは、どうよ?」 名案だろ?なんて微笑んで、返事もないのに様子を窺った。 (24) 2022/08/26(Fri) 19:01:00 |