【人】 虹彩異色症の猫[ 孫らの姿を見るや否や、子猫は後ろ足立って澤邑に縋り付くき、まるで抱き上げてとせがむようだ。 すっぽりと腕に収まる子猫を見て、祖父ばかりずるいと子らが騒ぎ立てる。自分たちも子猫を散歩させてみたいのだと、装具の持ち手が欲しいと強請る。 子らなりに可愛いがっており、手を伸ばして子猫を撫でるが、当の猫にとっては粗略な手付きが不当な扱われらしい。触れられた箇所をせっせと舐めて毛繕う。更に伸びる手からは身を捩り、このままでは出掛けるどころか邸内の何処かへ逃げ隠れでもしかねない。 無事に出掛けられたとするなら、澤邑が孫をいなしたのか。今日は猫のおやつもあるとの呼び掛けに、うるるる、と唸りに似た、それにしては迫力のない鳴き声を漏らす。 そんなものではご機嫌取りにならないと、抗議のような拗ねのような声音だ。 昨日と同じに良い天候で、子猫を膝に乗せ澤邑が腰掛に落ち着くと>>16、朝の冷えとは異なり春の陽差しが燦々と降り注ぐ。猫も陽気が心地良いのか、微睡み始めた頃合いに退屈だろうと思ったのか飼主に地面に下ろされた。 眠気を払うように勢いよく首を振ると、大きな耳が振れてぴるるると音でもするようだ。 大きくひとつ欠伸をすると、うろうろと澤邑の足元を歩いたり、地面を嗅いだり、手頃な大きさの石を転がしている。]** (24) 2022/04/14(Thu) 19:27:32 |