【人】 巫女 ユピテル>>19 ミズガネ 「コト……わっ!」 抱き締められ、慌てた声が出ます。 思わず呆けてしまったから何度も瞬きをして、 ようやくその現状を理解すると、その背に手を回して、 ぽんぽんと軽くあやすように叩きます。 「……服、冷たいね。 昨日触れてくれた時はただ温かいだけだったのに。 ごめんね、探しまわらせちゃったかな」 それほど駆けてくれていたのでしょう。 秋口の夜、服の冷たさをまず感じて。 でも本来はそうなのです。暖かさを感じるのは、今みたいに抱きしめて少し経った──そう。丁度今くらいに、感じられること。 「……でも、こうしてると温かいわ。 それに、鼓動の音が聞こえる。 戻ってきてくれたのね、ここに」 慎重さもあるので少し屈んでから、あなたの胸に耳を当てて、その心音に安堵したように目を閉じて暫くそうしてから、再び抱きつきます。今度はこちらから強く、背に回した手にも力を込めて。 「……夢みたい。 もう一度、ずっとこうして触れたかったから」 彼が存在する証明をユピテルはいくらでも出来ました。 それでも、身体を生み出すことはできない。こうしてまた触れ合える事はそれこそ夢のようで、ここが夢なのに、不思議なお話です。 (25) poru 2021/10/24(Sun) 22:38:06 |