【人】 商人 J[ そんな落ち着いた空気を破るように、女の耳に乾いた木を叩く音が三つ、その耳へと届いた。 扉の外にいるのは灰色の髪をした男がひとり。 女に護衛はない。 距離を取り、自分の他にも女を探る視線が無いか確かめたが、女に好奇以外の目が向けられてはいなかった。 女がひとりで宿を取っていることもわかった。 故に、接触することに危険はない。 少なくとも自分の側にはないと、そう男は判断した。 コン、コン、コン と、再び三度扉を叩く音。] (25) 2022/03/13(Sun) 20:33:03 |