【人】 日差しにまどろむ ダニエラ昼下がり。当直の電話番。 上司からの指摘を受け整理整頓したはずのデスクは、ものの3日で元の有様へと返っていた。 鳴らない電話を後目に、指先がキーボード上を舞う。 端のキーをタイプする両手小指にだけ、艶やかなエナメルが咲いていた。 「あー」 「できたあ」 気怠げな声。 視線を移した右腕の腕時計は、定刻より前を示している。 女は物臭で、自堕落で、――そうあることに関しては本当に余念がない。 そのことと、終業時間が近付く頃には不思議と仕事を終えている特技とは、どうやら矛盾しないらしかった。 この日もそれで器用に終えた仕事を見返しながら、薄化粧の口元が弧を描く。 ずぞ、とスムージーの底でストローが鳴った。 (25) 2023/09/02(Sat) 13:01:14 |