【人】 灯された星 スピカおもむろに左手の薬指を圧迫していた指輪を外す。 それを、何の躊躇いもなく床へ。 4年間付けていたそれを外しても何の感慨も抱かないのだから、やはり自分は最初からどうしたいか決めていたのだ。 「アマノについていくわ」 元の世界に帰ったところで守れるものなどたかが知れている。 きっとやりたかったこと、守りたかったものに一つも触れられずに傀儡として踊って終わりだ。 「……対価、払っちゃったもの」 どこか楽しげに笑って、不器用な男の元へ。 指輪のない指をぐっと握って拳を作り、男を軽く小突くような仕草を見せた。 不器用なのは、きっとお互い様だ。 (25) 2022/01/29(Sat) 16:10:48 |