【人】 2年 ターコイズ― 現在:学園裏の森近くの飼育場 ― [グランデの祭りも2回目ともなると、生徒らの熱気が薄らと 学内も、その周囲の地域をも包んでいるのを知っている。 出店のために魔具などを作る者、 当日開かれる催し物のために腕を磨く者、様々である 魔術師として氷を操る己は、マーリン寮としては珍しく 魔法生物を育てるクラブに所属していた。 依頼やらのためにか材料を貰いに来る生徒もいるし、 或いはただ単に癒しを求めてやってくる者もいた。 毎年数人ほど、魔法生物をちょろかまして売りさばこうとする輩もいるので そいつらにはきついお灸をすえることもあるけれど、 それは兎も角、として。 一角獣の毛並みをブラシで整えながら、 今年はこの子が幻影魔法を披露するのだよな。と独りごちる。 クラブの先輩方や後輩は皆良い人たちだ。 競い合うこともなく、ただ、 ここで飼われ、或いは保護される生物のために 心を尽くして世話をしているから。 逃げだと、理解している。 学内での研鑽に。上がらぬ成果に疲れ果てて、 ただ、何も結果を求められぬ場所に居たかった。 誤算は、逃げ込んだ場所の心地よさだった。] (25) 2023/06/20(Tue) 19:09:27 |