【人】 看護生 ミン>>17 ラサルハグ まるで目から鱗と言わんばかりの様子にくすりと笑みが零れた。 邪魔をしないように納得したように繰り返される言葉が途切れるまで、穏やかに頷きながら相槌を打つ。 「人って突然、見えてたものが見えなくなったり、些細な事で迷ったり、分かっていたものが分からなくなったりする生き物ですから。 それに、お祭りの雰囲気や華やかさに圧倒される気持ちは私にも何と無く…わかります。 私もここに来てからずっと、…この光景の中に居る自分の時間がゆっくりと流れてるような気がしているんです。 …ラサルハグさんは物書きをしていらっしゃるんでしたよね。 ”先生”相手に今の言い回しは恥ずかしかったかしら。」 口元に手を当ててくすくすと肩を揺らす。 先ほどまで浮かべていた穏やかな笑みとは違う。悪戯っ子のような笑み。 「ふふ、私はここに訪れること自体がお勉強みたいなものですから。沢山のお花で彩られるお祭りなら、珍しい薬用植物の一つや二つはあるんじゃないかと思って。」 口にしながら周囲を見回す。 暖かな陽の光と美しく咲く色とりどりの花々と祭りを楽しむ人々の笑顔が目に映る。 全てを見て回った訳ではないが、これだけ沢山の花々が咲き乱れているならば言葉通り一つや二つは期待しても罰は当たらないだろう。 「…ラサルハグさんくらい素敵な殿方なら、妖精を自称しても、案外、驚かれないかもしれませんね。 まぁ、そんな、飴玉一つでお気になさらないでください。 こうして楽しくお喋りして下さるだけで凄く嬉しいですよ。 知り合いも居ない場所に一人で訪れたものですから、少しだけ心細かったんです。」 (25) 2022/03/23(Wed) 2:23:13 |