【人】 誰も殺さなくていい レヴィア>>24 ストレガ そんな声が聞こえてくるわけもない。 死体は何の音も立てない。 もう口から冷たい言葉を吐くことも。 細い指先がグラスを撫でる事もない。 何もかもが終わってしまった、ただの肉の塊。 もう少しすれば死の匂いが強くなり、やがて腐り。 きっと見るに耐えない姿になっていく。 黒猫を、胸に近い側に。 白猫を、その一つ外側に。 そうやって抱きかかえていたから、死後に固まる腕の中、 黒猫の方は随分ぎゅぅ、と抱きしめられていた。 まるで離さないとでもいうような、いいやきっと、 それはただの現象でしかなく、そこに意味などないのだけれど。 それでも何となくそう思えるような、抱きしめ方で。 白猫は、すんなりと取れる。 黒いリボンが一つ増えている。 女の頭のリボンが一つ減っているのも、貴方にはきっとすぐわかる。 足の付け根には拙い刺繍。 L..v...と、少しぐちゃっとした文字のようなもの。 殺すだけの女の手では、針子の才能はなかったようで。 手袋の取れた指、何度か針の刺さったような傷がその証拠。 背中にも、目立たない縫い目がある。 中に何かを入れて、また閉じたのか。 やはり拙いそれは、糸を切ればすぐに開いてしまうような 縫合だったけれど。 (26) 2022/08/26(Fri) 19:24:18 |