【人】 神原 ヨウあ、ええ、と。303号室です。 ………あ、はい、ありがとう、っす、ございます。 [受付で慣れない手つきでチェックインを済ませると どうやら相手が既に居ることが分かる。 途端に緊張のゲージが振り切れて、やっぱりやめようかとか 今なら帰っても大丈夫だろうか、なんて思う。 ──いや、しかし。 始まりは姉貴のお節介から始まったこのイベントだけれど オレも少しは思うところがあった。 いい加減、初恋を引きずるものじゃあ無いと。 頭に浮かんだのは、今はもうぼんやりとしか思い出せない 声も分からなくなった女の人の姿。 会わなくなって暫く経つけれど、彼女はどうしてるのか。 今頃結婚でもしてるだろうか、なんて思うとちょっと胸が痛い。 それに、相手ももう忘れているだろうし。] (26) 2021/07/01(Thu) 19:41:13 |