【人】 住職 チグサ── 慈厳寺境内 遠くで鳴る鐘の音 ── [潮風に乗って、物悲しい鐘の音色が届きました>>18。 老いて遠くなった耳にも聞こえるほど、何度も、何度も。 名残惜しむように。あるいは慟哭のように。 この音色は、へレース聖堂の鐘でしょうか。 全ての命は、生まれた瞬間から死に向かっていく。 その真理に則り、今日もまた一つの命が喪われたことを、鐘の音が知らせていました。] …………。 [鐘の音に体を向け、胸の前で合掌し、深く頭を垂れながら、短いお経を唱えました。] 一心頂礼 万徳円満 釈迦如来 真身舎利 本地法身 法界塔婆 我等礼敬 為我現身 入我我入 仏加持故 我証菩提 以仏神力 利益衆生 発菩提心 修菩薩行 同入円寂 平等大智 今将頂礼 [私はおそらく故人とは信仰の異なる身でしょうから、読経は失礼にあたるのかもしれません。 それでも、死の気配に立ち会えば、唱えずにはいられなかったのです。 低くお経を詠みながら、未だ誰か分らぬ故人と、近しい人々の悼みを想いました。]* (27) 2022/11/04(Fri) 19:11:31 |