【人】 魔神 ハーレフしばらく、沈黙が落ちた。 ヘイダルは黙々と手を動かしていて、私はそれを見ていた。 私はお喋りが大好きだけど、この静かさは悪くない物だった。 そしてぽつりと落とされた問い掛けは何処かあったかいもの。 この空間に満ちる雰囲気と、同じ。 「ヘイダルは、優しいねぇ」 いつものぽんぽん跳ねるような声音を抑えて、私は微笑む。 「私、願いを叶えたがってるかな。 外から見たらそうなのかな…でも確かに、拒むよりは叶えたいよね? だって、その方が皆幸せだものね」 別にそれは暇人とか物好きでやってる訳じゃないけど。 ランプの魔神のルールに縛られてるって理由だけでやってる訳でも無い。 私を暗くて狭いランプから連れ出してくれるご主人様の事は、いつだって大好きなのだ。 それが例え数舜の事だって、お喋り出来なくたって、構いやしない。 確かに“私”を外に出してくれているのも事実だから。 ─────でもね。 ─────願いを叶える私が、願って良いなら、ね。 (27) ときいろ 2019/06/14(Fri) 19:23:08 |