【人】 封じ手 鬼一 百継狂おしい程の憤怒と、一葉への変わらぬ穏やかな想いで、身が引き裂かれそうだ。 本当に、本当に、如何とすれば良いのか皆目見当もつかぬ。 何故、今、儂に語りかける。儂は望んではおらん。その目的は何なのだ。 ――この一葉、百継様に一度たりとも嘘は申しておりませぬ 「言わぬことがあっただけ、と? そんな言葉遊びなぞ、聞きとうない」 かすれた声が出た。 一葉の「目的」が解ったから。 つまり、一葉は、今までと変わらず儂に誠実であり、決して嘘はつかぬ。 儂に不安や不信を与えぬ、その為の語りかけだった。 考えるより先に腑に落ちてしまい、しかし、やはり、素直にその手を取るには至らない。 ――沈黙が落ちた。 どのくらい、そうしていただろう。 不意に、一葉の身体がぐらりと傾いだ。 (28) TSO 2021/04/23(Fri) 16:15:41 |