![]() | 【人】 今宮 水芭「今から、皆さまに、幸せなひと時をお届けいたします。」 等身大の人形が唐突に口を開きました。 背後の人形と思っていたのは、実は人形売りの行商だった……そんな驚きも冷めやらぬまま、 今度は小さな人形たちがめいめいに動き出したのですから、いよいよ吃驚仰天です。 めまぐるしく注がれる未知の奔流はすぐに恍惚と変わり、私はすっかり人形たちの織り成すの舞台に魅入ってしまうのでした。 これも外国の絡繰仕掛なのでしょうか。 あまりに滑らかな所作は、作りものなのか、そうでないのか、境界は曖昧です。 その曖昧さに強く惹かれながらも、 夢を見ているようなその感覚に己の "病癖" 背筋に、こんどはハッキリと一陣の冷気が吹き抜けていきました。 (28) 榧 2025/06/27(Fri) 1:01:37 |