【人】 傭兵団長 ダイゴ - →市場 - [国の人間から余所者、ヒューマンから獣人まで。 無秩序な市場広場の雑踏や、火薬や魔法薬、土煙の匂いに慣れた鼻に多種多様の香りが擽る事が、今の自分の心の乱れを都合良く誤魔化してくれた。 安堵する。 この音たちが。この声たちが無ければ、 大きく漏らした溜息が誰かに聞こえていたかもしれない。 『別に構わないじゃあないか。溜息の一つくらい』 群衆の誰かが、自分の声を模して背後から囁いて来る。 そう、誰かだ。俺ではない。 ] ……。 [声を退けるように視線を横に向ければ、石煉瓦造りの建物が目に留まる。小さく古びているが、中は何時も涼やかで、古書も状態良く購入出来る為、非番の時に頻繁に訪れている書店だった。無意識に辿り着いていたようだ。 そういえば、ここ最近本すら読んでいなかった気がする。 防衛戦が長引いていたので戦い詰めだった事もあったが、それ以外でも、訓練や哨戒任務に時間を当てていたせいで、個人的な時間を削っていた。] (28) 2021/04/14(Wed) 20:35:04 |