【人】 千早 結── 名もなき病室 ── こんにちは。 うん、ぼくは、おとうさんの、おともだちだよ。 [目を覚ましたベッドの近くに ふわふわと漂う小さな泡沫があったので、 尋ねられるままに答えた。 消え入りそうは音はあまりにも無垢に煌めく。 これはぼくの幻聴なのだろうか。 それともあの時聞こえた声が真なのだろうか>>0:112 これまで見えなかったものが、聞こえなかったものが 今は形を纏い、脳に色を齎すようだ] 名前を、呼んでほしいの? [こくりと頷く素振りを見せた泡沫の輪郭を撫でる。 未だ恨みや未練にすら成り果てぬ、小さな小さな、ただの願いの塊のように感じた] (28) 2022/08/13(Sat) 13:56:05 |