人狼物語 三日月国

101 演劇の村 第二幕


【人】 【灰】 シンデレラ


 私は困惑していた。
 何故かといえば、『目隠しのない表情があると思っていて、薬を飲んだらその表情に切り替えよう』という天の声の当てが外れたから。
 ではない。
 そうではなく、舞踏会に来たはずなのに、王子様の結婚相手を探すための煌びやかな舞踏会へ来たはずなのに、周りの人々はやたらとピリピリしている。そんな雰囲気を肌で感じる。
 彼方此方で肌と肌、鉄と鉄、紙と紙のぶつかり合う音が響き、私の耳を通り抜けていく。
 これは一体全体、どういうことなのか。
 しかも、しかもだ。
 
「おほほ、今晩は。素敵な夜ですわね」
「ま、負けました……私の負けです。この『ドレス』に『ガラスの靴』……ッ。そして何より、その『美しい』瞳ッ!! 完全敗北です……いっそ清々しい気持ちですよ。どうか王子様とお幸せに」

 と、こういった具合に。
 挨拶する相手が勝手に勝手な敗北宣言をして、私の前から去っていくのだ。
 
(29) 2021/10/22(Fri) 1:13:09