【人】 『生贄の女』 ソフィア化粧を施し、身を華やかな布で着飾って。 こんな姿になったことなんて一度もないものだからか 支度を手伝ってくれた友人は うるうるとした瞳で私を見た。 「 ……泣かないで、大丈夫よ。 私は大丈夫。 だから、ね。 」 慰めの言葉をどう感じたのか。 ぎゅう、と私を抱きしめてくれる手に、 私の目だって潤んできてしまう。 それでも、涙は落とさない。 流れ落ちれば折角塗った化粧が崩れてしまうし なにより、今は悲しむ時では無いから。 (29) 2021/06/15(Tue) 20:00:57 |