―回想:「うさぎ堂」稲庭の夫婦―
[事情は聞けていたか、もし聞けていなくとも父娘だけならば察せられるものはある。
>>25自分にも娘が生まれたこともあり、稲庭母は幼い娘さんに同情的であった。特にメニューに贔屓などするのは、かえって気を遣わせるだろうからやらなかったが。稲庭父は何も言わないが、甘味を作る際にはいつもより気合を入れているようには見える。]
「おいしく食べていってね」
[と、妻の方はあんみつを置く際に声をかけたりはしただろう。細かい好みは違えど、甘いお菓子が好きな娘さんに、その母親の面影を見出しながら。*]