【人】 無表情 トオル「わ、わすれられるはずないよっ!あ、あの時…お兄ちゃんがハンカチをくれたのが嬉しくて…家族以外の人から…何かを貰ったことなくて…。はじめてだったから…っ」 [ トオルは泣きじゃくりながら一生懸命に想いを伝えようとしてくれるしずくを見つめて、胸が熱くギュッと痛むのを感じた。こんな感覚は初めてだった。] 「本当に本当に嬉しくて…。あれから、お兄ちゃんに思い出してもらえるように絵を今まで以上に描いたんだよ? 綺麗っていってもらえたら…いいなってっ。お兄ちゃん…ありがとう…お兄ちゃんにとっては、きっと小さな思い出かもしれないけど…わたしはっ、私にとって…大切な思い出だったからっ…だからありがとうっ! [ しずくが、自分と同じようにあの頃のことを大切に思っていてくれたことが、とても嬉しかった。 孤独だった自分の世界を変えて、誰かと共に過ごす時間の愛おしさを教えてくれたのは、あの時のしずくだった。 「俺こそありがとう、しずくちゃん。 …しずくちゃん、また俺と会ってくれる? しずくちゃんの絵、もっと見せてくれないかな?」 (31) 2020/06/20(Sat) 22:35:37 |