【人】 商人 ミロク>>フジノ おはじきの一件から数刻、湿気が籠もっている部屋よりも広間の方に男はいた。 鞄の中身を一つ取り出しては、中身を確認して戻す。 一つ取り出して、また戻す。その繰り返しだ。 しばらく。 商品の中に片手に収まるぐらいの大きさのお茶の缶があった。 それが手元から滑ったのか、ころころと転がれば。 今し方やってきたフジノの足にぶつかって停止する。 「……。」 「すみません、取っていただけますか?」 男は女学生の姿を確認すれば席こそ立たないが、比較的穏やかに、丁寧に話しかけた。 (32) 2021/07/03(Sat) 9:13:10 |