【人】 チャラ男 ウラミチ男は再びあの教室へ来ていた。 立ち直れたわけではない。 呼吸が引き攣り、頬も濡れたままだ。 けれど再びここに来たのは、ミナイの言葉を聞いたから。 恐怖に早まっていく鼓動を抑えるように胸に手を当て、逡巡しながら一歩、一歩と誰もいない……否“二人しかいない”教室の奥へと歩を進めた。 牧夫の姿を見、眉間に皺を寄せた。 そしてカナイの傍へ。 「………」 遠目から見れば一見、ただ寝ているようにすら見えるカナイをじっと見降ろして、唇をかみしめた。 (34) kotorigasuki 2022/07/13(Wed) 13:39:27 |