【人】 忘れ屋 沙華>>30 >>31 「はいはい、したたかなこって。」 ユヅルを取り戻すようにすればさらさらと頭をなで始めるのだが。 履物の分を除けば、沙華の背丈はユヅルのそれより僅かばかり低いに留まる。 ユヅルの背が綺麗に伸びている事も相まっているのか、並べばシラサワのような長身でなくとも 沙華に小じんまりとした印象を抱くのは否めなめそうにない 現にシラサワを見上げるようにしながら会話をしている。 「陰険頑固の島長がどう祭を取り図りたいかなんて俺は知らないよ」 「耳が早いだけさ、記録係ごときの俺に大したことは期待しなさんな。」 「けどそうだな、今年は俺にもお鉢が回つてきている」 そう捲ってだされた沙華の手首にもやはり木のブレスレット。 「いい機会だから詳しく話してやってもいいかもな?俺の気が向いたらばだけど。」 ふ、と間を開けて笑ったのか溜息をついたのか。 「・・・なあに今日の明日ので突然なにかが変わったりはしなんだよ。」 「些末なことは今は忘れお過ごし召されよ、な。」 視線こそ合わせているがどこか遠くをみているようで。 少なくとも今この場で込み入った話を打ち明ける気はないようだ。 「今年も部屋のほうありがとうねユヅル君、俺もしばらくしたら宿に引き上げるとするよ。」 (34) 2021/07/20(Tue) 16:51:32 |