【人】 光の尾 マンユゥ― 婚儀の日 ― [選ばれた者たちは長年住んだ土地を離れ、 新しい場所に新居を構えるのだと言う。 自分の荷物を纏め、荷台に積んで。 普段農作業をする時の簡素な服装ではなく、 この日の為にあつらわれた婚礼用の装束に身を包み 化粧を施し、白い花飾りで髪を結った。 いっそ家出でも企ててやろうかと思ったが 森から碌に出たことがない世間知らずの小娘に この地を離れて行くあてがある筈もなく 結局そのまま婚儀の日を迎えることとなった。 結婚とは人生の墓場だと言う。 すっかり諦めの境地ではあったが、 旅立ちの一行の中に見知った人の姿を見つければ そろそろと近づいて声をかけたりしたかも。] (34) 2021/12/02(Thu) 14:07:13 |