【人】 孤児 ヘイダル豪奢なソファー、明らかに上等な織物。 アールアレフの自邸に呼び出されたは良いが、触ったら割れそうな華奢な茶器といい、見たこともない繊細な外見の菓子といい、どうにも居心地が悪い。 そも、"仕事"をしたばかりで、俺、いつも以上に埃やら何やらで汚れているし。 汚しちゃいけないんじゃないかという意識がどうしても働いてしまって、もぞりと尻を小さく縮こませた。 「…………っ」 ゆるりと女が背後に回る。 たおやかな指が肩から、そして首へと。 つつ、と辿る硬質な感触もさることながら、体温を持つ指すらもなんだかひんやりと感じられる。 ────人形、みたいだな。 悠長にそんな事を思ったのは、ほんの一瞬。 優雅さを失わないのに有無を言わせない申し出に背がひくりと凍り付いた。 (34) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 21:58:57 |