【人】 メカニック ゾズマ【モノクロームの夢】 [ゾズマが物心ついた時から既に、母と自分が“わたしたちの民”であると扱われていることは認識していた。 “わたしたちの民”の星のことは、幼過ぎたこどもの記憶には断片的で曖昧で、まるであたかもはかない夢の如くしか残らなかった。 星についてのろくな記憶も残らなかったまま、その星の外で、たくさんの人々の声を聞いた。 ある人は、生活の支援を手厚くしてくれた。 ある人は、ひどい国に居たんだねと同情した。 ある人は、星の滅亡の件について調査しに来た。 ある人は、独自の言語を教えてくれと押しかけてきた。 ある人は、結局はテロリスト、逆賊だと嘲ってきた。 ある人は、失われ滅びゆく悲しき民だと嘆いた。 ある人は、誇り高く美しい民だと褒め称えた。] みんなウザい。 [星の外の人々は、ゾズマやその母を“わたしたちの民”だと知った途端に、ふたりを“わたしたちの民”としてしか見なくなった。] (34) 2022/07/15(Fri) 6:45:02 |