人狼物語 三日月国

224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】


【人】 渡りに船 ロメオ

こっくり、こっくりと舟を漕いでいる。
陽光差すベーカリーのカウンターに腰掛ける男は、
腕を組み目を伏せていた。

木製のドアベルが鳴らす温もりある音色で、
瞼が隠していた翠の目が開いてすい、と上を向いた。

「……しゃいませー。ごゆっくり」

欠伸一つ。
到底接客をする態度ではないが、許されている。
事実訪れた夫人はその姿を上品に笑い、香り良いパンの並ぶ棚を眺めはじめた。
男は丸めた背を伸ばし、一応は店番の形を取る。
屈められた長身が伸びてカウンターに少し影を落とした。

時計を見る。バイト終わりまであと2時間。

「……今日は何件入ってんだっけか」


──ここの空気は温すぎる。
仕事が終わればまた仕事。それを良しとしている。それを望んでいる。

時間になれば席を立つ。
ゆらりと店を出れば眼鏡を外した。これからの仕事にこれは必要ない。

そのまま店の隙間、路地の奥に、ゆらり。
(35) susuya 2023/09/04(Mon) 11:37:51