【人】 小さな心 サルガス>>33 ブラキウム 「ブラキウムは、――ブラキウムは、いつも、上に立つ人らしく、してるよね。 じぶんはつよくて、こわくて、だれにもばかにされちゃいけないと思ってるよね。 でも、こころのいちばんしたからぜんぶほんとうにそうだったら。きっと、ぼくに声をかけない」 それは真ではないかもしれない。少年の善性が、そう思い込んでいるだけかもしれないだろう。 人の心の何もかもを水鏡のように見透かすことなど出来はしないのだ。 ましてや、まだ未熟な子供にそんな芸当など。そう思いたいだけなのかもしれない。 それでも、少年は貴方の中に厳しさも強さも、何もかもが育まれていることを信じている。 「ブラキウム、ぼくのともだちの、ブラキウム。 ぼくも、きみが心配なの。きみも、きっと知らないところで、危険なことをしてるでしょう。 でも、だいじょうぶだから。 ぼくが、きみをだれにも連れて行かせない。ぼくがきみを、守るから」 ああでも、だからこそ。約束は結ばれない。 (35) 2021/05/29(Sat) 13:41:36 |