【人】 「騙」の神 ペノル彼女がその後続けた言葉で、ワタシの先ほどまでの煩いは……「ワタシと、アネーシャちゃんと、この戦いについて」の議題は消えていった。 その代わりに まるで何を言っていいかわからなかったことが嘘のように、口を突いて言葉が出た。 「愛は狂じゃないよ」 アネーシャちゃんの両肩を掴んで、首を振る。 「ワタシも、アナタも、"真"を追うことを放棄している。 真なんて無いと、不条理そのものを受け入れている。 ワタシはアナタと似ている。 だから言うよ。 サティは、決してそこを諦めない。 愛を、不定形の渦などとは、考えないんだ。 果てない道であろうとも、愛について手を伸ばし続けるんだ。 ワタシは優勝する。 でも、アネーシャちゃん。 アナタの提案は否定する」 ワタシは、なんでこうなのだろうね。 「騙」の神ならば、「そうだね」と微笑んで、頷かなければならなかったんだ。 あの愛の神の歌声を思い出して、らしくないことを言ってしまった。 これは、いけない。 今からでも遅くない。 さあ、取り消すんだ、「騙」の神、ペ ノ ル …… (35) TSO 2019/10/06(Sun) 17:59:24 |