【人】 高山 智恵 私の返答を聞くなり、カズ君はすぐに、その場に代金を置いて店を出て行った>>19。 「ってあっ、ちょっとカズ君――お客様!」 はっと呼び止める声が口をついて出てきたけれど、多分もう彼の背には届いていないだろう。 カウンターに置かれたお金はぱっと見50円くらい多かったのだけれど、まあその件は今は本当にどうでもいい。 (海外の飲食店みたいなチップ制とかはうちには特にないので、不正会計疑いとか起きないように一応差額は控えておくことにした) 脳裏を過ったのは、もっと別のこと――彼が無理してまで一人であの子を探し回ったりしないか、だ。 ホットココアの代金(よりも少し多いお金)をひとまずレジにぶち込んでから、私は一度バックヤードへと走った。 (35) 2022/10/22(Sat) 10:49:18 |