【人】 行商人 美濃[うさぎ堂での食事を終えて店を出れば、雨の中の榛名を歩く。 この雨だ、出歩く者は多くないのであろう。 いくらか歩けばもう吹き荒ぶ雨に蛇の目は然程役立たず、髪や服を濡らした。 路上に人の姿はあまり見当たらず。 大事そうに箱を抱えて歩く年嵩の男性を横目に見送る。>>12 余程大事な用事でもあったのだろうかとはこの地に慣れていそうな迷いのない足取りから。 箱の中身が愛猫とは知らねども、鞄の中の、女にとっては大切な箱を思い起こした。 常の榛名はどの程度の賑わいなのだろうと想像して、陽射しの中行き交う人々を脳裏に幻視する。 明日は常より人も増え、賑わうことは確かだろうと思えばいくらか足取りも軽く。 借宿へと戻り再び濡れ鼠となった姿を見せれば、宿主から苦笑を返された。**] (36) 2022/09/30(Fri) 10:41:14 |