![]() | 【人】 大粋な噺家 躯川 茶弥さて、いよいよ本格的にはじまりましたこの全員狩COの村。 マッキュンや別の噺のゲルトのように、毎度毎度ひでぇ目にあう人物ってぇのが落語にはいたりするもんです。 ゲルドなんてなぁいわゆる「粗忽者」にあたるんでしょうかね。人狼の出る村じゃあわずかな気の緩みやそそっかしさも命取り、ってなわけで御座います。 「旦那! さみー…じゃねえ、茶弥の若旦那!」 「なんだいハチ騒々しい。ルビがなおってないんだよ。いつもお前はそそっかしいね」 「いやそれどころじゃないんですって。人狼! 狼男がこの街にも出たんですってよ!」 「にわかに信じがたい話だねぇ。まあ尺の都合で信じるけどさ。で、私に占えってぇのかい?」 とまあ若旦那が妙に心得よくにわかに取り出したのは、質屋で急ごしらえしたという南蛮の水晶玉。 「こんなもので人狼がわかれば苦労はしないがね……ってあっタマ、これはあんたの好きな鞠じゃない! お返しな、ってあだだだだだ」 「ああ、旦那! タマが、じゃない、玉が外に転がっていきますよ!」 「行きますよじゃないんだよハチ、はやく取りにいくんだよ」 「へえ……ああっ」 ハチが見ると、水晶玉はタマとは別の猫の前。 そしてその玉には文字が浮かんでるじゃありませんか。 【又次郎は、人間】 「……猫じゃないか」 「……猫ですね」 占う相手を選び損ね、結果も不可解、理解せず。 二人仲良くそそっかしい。 そんな噺で御座います。 お粗末様。 (36) 2025/08/09(Sat) 21:14:48 |