【人】 書生 シキ>>35 青年の細い視線は、村の祭りを彩る景色ではなく 寧ろ、それに照らされ移ろう人々の様子へと向いていた。 ともすれば、何か品を定めるかのような様子で以て。 「……ありがとうございます」 そう言った後、閉じた本を胸元から下げれば。 「俺は、シキです。 ここには『先生』の言い付けで来ました。 もう一週間くらいは、ここでお世話になっています」 向けた穏やかな表情は変えぬまま、 しかし淡々と、言葉を連ねる。 その様子は、見た目の歳にしては ひどく落ち着きに満ちているようにも見えるだろう。 「記録ですか。 であれば、やはり"これ"についてのことで?」 その青年の、本を持つの方の手首には、 やはり、見慣れたブレスレットが揺れていた。 (37) 2021/07/20(Tue) 17:17:53 |