【人】 豊里[話に聞いていた場所に向かってみると、 人垣の先に大きな櫻。 そして其の下で舞う狐面の男が見えた。>>13 もう始まってしまっていたが、始まったばかりの様だった。 人垣の頭と頭の間から、顔を覗かせて其の姿に見入った。 音を鳴らすのは鈴のみで、お囃子などはないけれど。 でもそれが却って神秘的に思えた。 狩衣の袖がふわりと揺れて、扇が空を切る。 桜の花びらは、舞い手に追従するように踊った。 リン…… 最後に鈴が一つ鳴ると、舞は終わった。 拍子をとっていた見物人の手が、拍手を送る。 真希奈は圧倒されつつも、手を叩いた。 どのような歴史がある舞か、 残念ながら真希奈は知らないけれど、 お薦めして貰って、見ることが出来て良かったと思う。 技術は新しいものに、どんどん上書きされてしまうけれど、 美しさは決して色褪せない。 ずっと大切にされていくものだから。**] (37) 2022/04/12(Tue) 21:32:49 |