【人】 片連理 “椿”[屋根裏のクローゼットには、様々な衣服が掛けられている。扉の裏の姿見に映しながら灰色のロングシャツと黒のワイドパンツを選んで、手早く着替えた。 ついでに、薄紫のショールを羽織る。鏡の中の自分は、昨日よりも幾分か顔色がよくない。 階下で何か物音がした。椿は梯子の降り口のそばに猫のように丸くなって、荷物を開けて何かしている楓の様子を窺う。声のひとつもかければ良いのに、なんとなくただ黙って見ているだけで。楓がこちらに気づけばにこりとするし、気づかなければそのまま様子を見ているつもりだ。 外に垂れ下がった髪は不気味に映るだろうか。椿はそんなことは気にしていないのだが。]** (37) 2023/03/05(Sun) 12:56:13 |