【人】 痛覚鈍麻 ラサルハグ>>35 サダル 「はい、どうぞそのように」 返答は何処までも淡々と、そして淀みなく。 そのどちらが本性なのかなど、考えるだけ無駄なのだろう。 「……報酬、ああ、そのような話もありましたね」 三人で交わした会話も、今となっては随分と昔の事のようだ。 実際は、たった数日の事なのだけど。 「この仕事は、何も完璧な結果を求めるものではありませんでした 仮に僕がどのように失敗しようとも、あなた達が条件を…… つまり、 最終的に一定数の乗客をこの船へと引き渡せば 取引は、それで為される手筈だったのですよ」 「──けれど、その条件には足りなかった。 然して、全く結果が伴わなかったというわけでもない。 故に、協議の結果、僕の身柄をこの船へと売り渡す事で 此度の取引は円満締結となった、との事です。」 滔々と、自分の事でないように無感動に語る。 勝利を得る事は叶わなかったが、他の手段で補填は為された。 "怠惰"にとっては、何の不満も無い結果だ。 既に取引は為された。 つまり、その報酬に残された価値は──── (37) 2021/07/11(Sun) 4:40:27 |