【人】 綴り手 柏倉陸玖>>+28 神谷 「はい、それだけです。」 疑問には、しれっと肯定が返る。 たとえ後輩が敬語でなくとも、その様子が好意的ではなくとも。 それは柏倉の気にする所ではない。 「…さて、なるほど。難しい質問ですね。 敢えてそう問うのであれば、君にとって 無条件の信用は信用するに値しない、という事でしょうし。」 無条件、言うなれば対価の無い取引は信用するに値しない。 口約束など以ての外。 そういった考えは、決して理解できないものではない。 「正直な所を言いますと。あの一件があったとはいえ、 おおよそ唐突に君の異能が落ち着きを見せる事で。 どのような形であれ、何らかの噂になるだろうなあ、と。 俺としてはそう思っています。」 「つまりは遅かれ早かれ噂は出回るのですよ。 そうなれば、俺は噂が広がらないように対処するだけ。 であれば君が確かに約束を守る、という姿勢を見せる事。 今この場に於いて大切なものは、それだけです。」 柏倉は、他人を信用していないわけではない。 けれど、時には信用を抜きにして考えた方が良い事もある。 副会長という立場の人間として、そう理解しているだけで。 そして、何よりも。 この副会長は、上手く白を切るのであれば、大抵は見逃す質だ。 (38) 2021/11/03(Wed) 12:31:23 |