【人】 冷たい炸薬 ストレガ>>36 レヴィア 「知ってる。あんたがあたいに興味持ってたら世も末だ」 「ま、時計には軽い口も脂ぎった肌もないからね」 そういう性質だとわかっているから、怒る事もない。 こっちも同じ風に返せばいいんだから随分楽なものだ。 それこそ、普段から機械と会話している女だから、 多少冷たいくらいが丁度いいのかもしれない。 「どうも」と再演と言葉には小さく返し、 あなたと違って荒れた手先がアンティーク家具をなぞる。 なんとなく、触れる家具はどれもファミリーのアジトの、 そこにあるものに似たようなものを。 僅かに悼むような表情を浮かべて。 甲高い鎮魂歌に合わせて、店内を静かに見てまわる。 人差し指と中指を足に見立てて、家具の上を手が歩く。 ランプのある一角で足と手を止めると、 その仄灯りを放つひとつに目を留める。 鈴蘭のような形のテーブルランプだ。 「作業のお供に悪くないかもね。買うなら幾らになる? あと、電球の替えもあるかな」 視線はランプのまま、そう投げかけた。 (38) 2022/08/09(Tue) 23:39:15 |