【人】 忘れ屋 沙華>>37 「そうかい、いまどき書生君というわけだ。」 聞けば納得したが、端から名前を呼ぼうという気も無い風。 「いいやなに、俺の本拠は寺のようなものでね。」 ブレスレットを見て一度は肯う、今回に限れば己の推察通りに違いない。 祭の記録に遣われる者。 「ご存じかもしれないがこのような集落じゃあ血縁や財産、そして生死の記録はそこで出し引きされる。」 「俺はそこからの使いぱしりという奴だな、然程でもねえが神涙で多少の意見は適う身さ。」 「べつに年一祭の時にしか島に出やがらないつう訳ではない、どこぞの舞子と違ってな。」 僧職というには不躾な物言い、悟りを得たというには仄暗い瞳中。 肝が据わったように落ち着いているとするなら、お互いすこし似ているのかも知れない。 「己が何を見るも勝手だが、尻拭いまで『先生』に頼るなよ。」 「好奇のが勝るとつうなら俺も手伝いくらいはしてあげよう。」 (39) 2021/07/20(Tue) 17:53:11 |