【人】 事務員 深瀬賢「――君は、この学院で何を学んだのかな?」 ――言葉に怒りは無く、侮蔑もなく。 けれど、はっきりと問いかけた。 事務室の一角、向かい合ったソファにそれぞれ腰を降ろしている。 彼女の行動で、一人の人間を傷つけた。 それをごまかすでもなく、なぁなぁで済ませてしまうのでもなく、ただ真っすぐにぶつけた。 「私は君の担任ではない。 夜遊びを咎める事もしないし、『なぜ自分は人間でないのか』と荒れる事も構わない。 だが、その為に他者を傷つけてよいとは誰も言わなかったろう。 私達だけでなく、人間でも知っている事だ。」 責める事はせず、追い詰める事もなく、 事実を一つずつ積み上げていく。 彼女が納得できるよう、同じ過ちを犯さぬよう。 「何故してはいけないのか」と言い聞かせる。 (43) 2024/11/10(Sun) 11:45:48 |