【人】 銀の弾丸 リカルド>>43 ツィオ 「あ”? 大の男を女扱いするな、ツィオ」 深く眉間にシワを寄せ、声をかけられた先を振り返ると想像した通りの顔がそこにある。 10代の頃からマフィア入りをして、拾ってくれた上司に常について回っていたのだから遊び慣れしてなくても仕方ないだろう。 もうすっかり板についているとはいえ、あのズボラな上司の世話をするのは少年にはそれなりには大変だったのだ。 寄せたシワも仏頂面も、これが殆どノーマルの状態なのだから変えるのは難しい。 隣に立った男と足して2で割ればちょうど良いくらいかもしれないが、この軽薄な表情を自分が浮かべれば、何人の人間が震え上がってしまうか見ものだ。 ……まぁ、土台無理な話なのだが。 「それは自分でもわかっている。 視察に来てみたはいいが、このような場所はどうにも落ち着かん」 紫煙を漂わせながら、居心地悪そうに身じろいだ。 周りを見てみれば、確かに酒を持っているものが多い。 確かに準備不足だったかもしれないと息をつくが、決して呼び方について嫌な顔をしているわけではない。 「そんな者は居ないし、遊び慣れたお前じゃないんだから楽しみ方など知るはずもないだろう。 まぁ……いつ何時、あの方に呼び出されるかはわからんがな」 こんなところで上司の名前は出さない。 差し出された水を受け取って、続く言葉にはしっかり首を横に振った。 (45) 2022/08/10(Wed) 0:57:15 |