【人】 異国の道化師 マッド・リヒター[……10年後、マシューはユンカー家の顧問弁護士として働いていた。王女にも認められた"特技"を活かせる職業だ。とはいえ、楽な仕事では無い。 そんな彼に、ユンカー家の旦那様は気を利かせて"2つの贈り物"をした。1つ、元々別荘として使われていた王宮近くの屋敷。此処を事務所として譲渡する。そして、もう1つ……一家の使用人を1人、彼の秘書として付けてくれた。その女性は、妻のジゼルだ。] [娘は今年で7歳になる。最近は仕事が忙しく、娘の姿を見る時は妻の膝枕で寝ている時か私の膝上で本を読んでいる時かの2通りしか無い。只、娘と目が合った時には、つい仕事を投げ出したくなってしまう。パチン、と指を鳴らし、頭に花冠を被せてあげる。それだけで娘の顔にも満開の花が咲いた。] 『この子、起きてたら喉が乾くまで話を止めないの。 嘘まで上手に吐いて……一体誰に似たんだと思う?』 [娘の小さな頭を撫でながら妻はため息を吐く。] 君じゃないか。可愛いところが瓜二つだ。 [書類と決闘しながらもふふっと笑う。嗚呼、仕事が忙しい忙しい。そう呟き、再びデスクに向かう。 そして妻は……口癖の様にいつものセリフを言う。] 『全部"魔法"で終わらしちゃえば楽なのに。』 (45) 2020/05/19(Tue) 22:53:52 |